【赤い糸】

子ども同士がするようなキスをして、互いに見つめあい、
場違いにも同時にくすっと笑った。
「二人とも戻ってこれたら、この続きをしようか?」
サニーさんはにやっと笑い、僕を後ろから抱きしめて、
「絶対に負けられない理由が出来てしまったから頑張らないとね」と囁いた。
低めの・・・ごく普通の声。
全く作っていないサニーさんの声。
僕だけが知っているー

僕は頷いて、サニーさんを見上げ、「楽しみにしていますね」と言った。
サニーさんは驚いた顔をした。
「随分と余裕なんだね」
”怖くはないのかい?”と大きな手が僕の髪を愛しげに撫でた。
「それはー怖いですよ」
体の向きを変えて、サニーさんに抱きつく。
「でも、あなたと一緒だから」
サニーさんの腕が僕の背中に回り、しっかりと抱き込まれて、僕は安堵する。
「そうだね・・・」

「新次郎、人生を満喫してきなさい」
「はい!」

僕には涙は似合わないといつかサニーさんが言ったのを思い出し、
こみ上げるものをぐっと堪えて、笑った。
「いい笑顔だ」
「えへへ」
サニーさんに背を向けた途端、涙が次から次へ溢れ出し、視界がぼぁっと潤んだ。
涙はすぐに外気に冷え、頬を凍えさせていく。
でも、心は暖かかった。

”サニーさんと一緒だから”



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